2021年3月4日
ノーベル文学賞受賞後の最新作『クララとお日さま』を世界同時出版したカズオ・イシグロ。
物語の語り手は、人間の子供に似た見かけのAIロボット、クララ。
寂しい子供を慰めるのが役目で、近未来の米国のどこかが舞台。
店頭に並び、「養父母」に引き取られ、ゆっくりと減退するまでの一生をカバーする。
極めて限定された形で世界を体験するクララ。
だが『日の名残り』のスティーブンスが、愛する機会を失って後悔したり、『わたしを離さないで』のキャシーが、自分が失ってきたものと折り合いをつけたりするのとは、違う。
クララは「白紙」の状態で生まれ、前だけを見て進む。
子供の眼で世界を眺める。
イシグロは元々、5-6歳の児童向けの話にするつもりだった。
だが娘のナオミに、子供たちがトラウマになるから止めて、と言われた。
技術革命が生み出す未来に対して、イシグロは楽観的。
AIが小説を書いたら、モダニズムが起こしたような革命が到来するかも、と語る。
ものの見方が人間と違うのが、AIだからだ。
自分は知的に退屈な世代の、古臭い作家、とイシグロ。
ノーベル賞にはほとんど意味がない、と語る。
全業績を振り返る時にもらうような賞だからだ。
ずっと同じようなことをしているローリング・ストーンズより、毎回新しいものに挑戦して自らを刷新したたボブ・ディランのようでありたい、と言う。
『クララとお日さま』は『わたしを離さないで』の姉妹編。
作家として、前の作品と感情面でも、雰囲気の点でも、常に対話をしている。
悲痛な物語だった『わたしを離さないで』に返事をしたかった。
だから今回は、人間というものを寿ぐ話にした。
その方が、よりポジティブな執筆経験になった、という。
(柴田優呼@アカデミック・ジャーナリズムがツイート)
TIME@TIME
Kazuo Ishiguro on how his new novel "Klara and the Sun" is a celebration of humanity ti.me/382xPKx