米中貿易戦争の背景と
ほのかな希望。
WTOの抜け穴を利用した
トランプの高関税政策は、
中国経済が
手に負えなくなる前に、
自ら築き上げたシステムを
自己利益のため、
修正しようとする
窮余の策とも言える。
ライトハイザー米通商代表は、
2001年のWTO加盟当時、
中国が欧米型資本主義へ
変容することを
西側は期待していた、と語る。
だが同氏によると、
その代わり中国で発展したのは、
政府助成事業に独占され、
米国の知的財産を盗む経済。
WTOには
政府助成を抑制する条項があるが、
欧米は自らの営みを
精査したくなかったので
抜け道を残した。
それを中国が利用、
元々どこまでが民間で、
どこまで政府が
関与しているのか、
判別しにくい
事業や事業体が多い。
ライトハイザー氏はさらに、
WTOの条項とは言わずとも、
その精神に
中国はそむいた、と批判。
中国に投資する外国企業は、
市場にアクセスするため
地元企業とジョイントベンチャーを
組まなければならず、
技術移転を強いられる。
中国への技術流出を
ただ指をくわえて
見守る結果に。
だが、中国を
交渉のテーブルにつかせるのは
容易ではない。
元々WTO内でも、
ルールの国際的一貫性を
唱える先進国と、
国内経済保護を求める
途上国が対立。
このためオバマが取ったのが、
地域的な取り決めを作って
中国に対抗、
中国を交渉の席に
つかせる戦略。
だがトランプ当選で、
ライトハイザー通商代表は、
スーパー301条で圧力をかける
昔の政策に逆戻り。
救いは、
中国に対する
米通商代表の懸念を
日欧も共有していること。
日米欧の三者は5月、
助成の通知義務や
事業体における
民間と政府の割合など
貿易の新ルール導入を協議。
特にEUは
米中の仲立ちをする用意があり、
7月16日
多国間貿易の改革について
中国と話し合う
ワーキンググループを設立。
だが、中国がどう出るかは
未知数。
WTOを通じた
改革自体が困難、
と懸念する米関係者も。
米国によると、
中国への技術移転は
成文化せずに
強制されたため、
条項を加えても
効果が薄い。
市場へのアクセスを
失うことを恐れ、
口に出そうとしない
企業もある。
だが一番のリスクは
トランプ。
交渉の途中で
習近平と妥協したり、
貿易ルールの設立より
自らの面子にこだわる可能性。
そもそもトランプが
ライトハイザー通商代表を
クビにする可能性も。
それに中国を御するのは、
もはや遅きに失した、
との声もある。
80年代の貿易摩擦時、
日本のGNPはまだ、
米国の40%だった。
だが今年、中国は既に
米国の69%となり、
次の5年間で
88%に拡大、
とIMF。
中国はトランプ在任の
2年から6年の間だけ、
やり過ごせばいい、と思うかも。