2020年5月9日
シェークスピアはペストの時代を生きた。
英国では特に、1582年、1592-93年、1603-04年、1606年、1608-09年には猛威をふるった。
教区の死者が30人を超えるとソーシャル・ディスタンシングを実施。
集会や宴会、アーチェリー大会は禁止。
礼拝中は感染しないと信じられていたので教会は閉鎖を免れた。
当時2、3千人の収容能力があったロンドンの劇場は、当然閉鎖。
シェークスピアがその傑作マクベス、アントニーとクレオパトラ、冬物語、テンペストを書いた1606年から1610年、ロンドンの劇場の開館期間は全部で9か月。
彼自身、大きな経済的打撃を受けた。
なのにペストを直接取り上げた作品はない。
ペストを作品化した同時代の劇作家もいたが、シェークスピアはむしろ、憤怒や嫌悪を表す際の比喩として使った。
道徳的に退廃した輩に、ペストを使った罵詈雑言を浴びせたりした。
ロミオとジュリエットでは、恋人達に死をもたらした行き違いの背景に、ペストによる隔離があったことを暗示した。
マクベスにも、街全体がペストに侵されているのはどのようなものか、語る一節がある。
だがそれはその国土というより、統治する暴君、マクボスを嘆くものとして語られる。
虚言壁があり、倫理観のかけらもなく、無能で血にまみれ、最後は自分で自分を破壊する指導者をいだく、ペストのような災いを。
(柴田優呼@アカデミック・ジャーナリズムがツイート)
The New Yorker@NewYorker
What can Shakespeare's work reveal to us about living in the inescapable presence of an epidemic disease?
nyer.cm/GBgcUOz